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高知地方裁判所 昭和23年(行)131号 判決

原告

中平忠太郞

被告

高知縣農地委員会

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

請求の趣旨

被告が昭和二十三年七月三日別紙目録記載の土地に付なした訴願棄却の裁決を取消す。

事実

原告代理人は、其の請求の原因として、原告はその所有の右土地を昭和二十年四月訴外森本安一に賃貸小作せしめたが、自作の必要に迫られ昭和二十二年三月二十三日同人に返還方交渉し円満にその承諾を得た。然るに同人はその後約旨に違反して土地の返還を履行しないのであるが、かかる土地は買收計画の対象とならないから、その買收を是認した被告の裁決は違法である。尚原告は昭和二十三年八月二十日に本件裁決書を受領した。又右小作契約の解約につき知事の許可を受けていないことは認める。と陳述した。(立証省略)

被告代表者は主文同旨の判決を求め、答弁として、原告が昭和二十年四月より其の所有の本件農地を訴外森本安一に賃貸耕作せしめていること、大正町農地委員が右農地を自作農創設特別措置法第三條第一項第二号により買收し、之に対する原告の異議を棄却し、原告より訴願したが昭和二十三年七月三日棄却の裁決をしたことはいづれも認めるが、原告主張の返地契約の成立は否認する。仮にその契約があつたにしても知事の許可を受けていないから効力がない。從つて之を小作地として買收したことは正当であると述べた。

理由

原告がその所有に係る別紙目録記載の土地を昭和二十年四月以來訴外森本安一に賃貸して來たことは当事者間に爭がない。原告は昭和二十二年三月二十三日に賃貸借を合意の上解約したと主張するが、仮にその解約の合意が是認せられるものとしても、それに付縣知事の許可を受けていないことは当事者間に爭がないから、解約の効力を生じないものと言わねばならない。

從つて本件土地は依然小作地であるから、その然らざることを前提とする原告の請求は失当である。よつて民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(目録省略)

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